一見、普通の都会のオフィスビルで颯爽と働いていそうな、都会的で、スタイリッシュな雰囲気の黒田さん。
北海道の「イトウ釣り」をする方であれば、彼女をご存知の人も多いのではないでしょうか?そう、彼女は北海道の大地で「イトウ」のため日々奮闘している、とてもパワフルな女性でもあるのです。
物腰も柔らかく、とても聡明で、魅力あふれる彼女が、その内に秘めている「イトウ」に対する情熱と、自然への愛を今回語ってくれましたので、ぜひご紹介したいと思います。
-まずは、黒田さんの現在のお仕事についてお伺いします。
現在は、NPO法人シュマリナイ湖ワールドセンターのスタッフとして働いています。
まぼろしの魚って言われている「イトウ」って知ってます?私は、そのイトウが大好きでこの仕事についたんですよ。
-大阪から移り住んだそうですが、なぜその決心をされたんですか?
昔から、冒険に憧れがあったんでしょうね。いつかは、自然に携わる仕事、自然に住んでしまいたいという思いは、ずっとありました。
そんな思いの中、大阪で仕事をしていた時に今のNPO法人シュマリナイ湖ワールドセンターの代表から、朱鞠内湖の仕事をすると聞いて、「私も働きたい!」と思い、一緒に飛び込ませてもらったんです。
以前から北海道に生息している魚「イトウ」が大好きで、「イトウに関わる仕事ができるならそんなに幸せなことはない!」という強い気持ちもあり、大阪から北海道に行くことにも、迷いはありませんでした。
-昔から自然が大好きだったんですね?
そうなんです。新田次郎の山岳小説にはまって、山に興味をもちはじめました。
それからは、みんながファッション雑誌を置いてる職場に、私だけ「山と渓谷」とかを置いてましたね(笑)
休日は、休みが少なかったので、比較的短い時間で登れる金剛山とか、滋賀、三重の方の山など、山に登っていました。
私が山に登っていたころは、山ガールブームなんてまだなくて、雷鳥を見るよりめずらしいっていわれてたくらいなんです(笑)
もう休みは、全部自然に使うっていうくらい山にはまっていた感じでしたね(笑)
―山以外はどんな外遊びをしていましたか?
学生のころは、ダイビングにはまって、就職してからは、小説の影響で、山にはまりました。
若いころは、秘湯巡りなんかもしてましたよ。絶景の中の温泉って本当にいいでしょ!
たまには友達とも行きましたが、基本は一人ですよ!一人行動大好きでした。
でも屋久島登山とか、もちろん女友達と一緒に楽しんだ外遊びもたくさんあります。日本って、外遊びができるところが本当にたくさんあるんですよ!
―現在北海道、幌加内町に住んでいますが、時々都会が恋しくなることはありませんか?
今のところはないです(笑)
この仕事をする前、比較的都会にいたので、みんなに良く言われますが、街に行きたいとかは
今はないですね。他の山に行きたいとか、本州の山に行きたいとかはありますけどね(笑)
―今の生活ってぶっちゃけどうですか?女性が生活するには大変?
まず、一つ言えることは、この町の自然は本当にすばらしい。その素晴らしさを共感できる人であれば、充実した生活が送れると思いますよ。
私は、幌加内町に住むうえで、普段から町のことを積極的に手伝おうとか、街の人々との関わりを大事にしてます。
10数名で構成されている婦人会にも参加していますし、地域の行事にも出れる時は出るようにしています。
顔を知った人ばかりで、皆さん困った時には助けてくれるんですね。そういう人との温かいつながりや、皆さんの優しさに支えられて、毎日生きているっていう感じです。なので、たとえ女性一人でも、車の免許さえあって、虫など細かい事を気にしない大らかな気持ちがあれば、安心して過ごせると私は思います。
家もびっくりするくらい安く買えるし、スーパーなんかも車で隣町まで行けばすぐですからね。
あとは、美味しい幌加内蕎麦がある!本当に最高!
―女性としてアウトドアで遊ぶ時に気を付けていることは?
実は、あまりケアできてないんですけど、保湿とかはまめにしてますね。
唇なんかすぐにカサカサになるので、ケアしてます。
あとは、やはりフィールドで働くスタッフとして、清潔感を意識してます。きれいな朱鞠内に合う身なりで、お迎えできるよう、女性としてすっぴんやボロボロの肌でお客様に合うことがないように、そこは意識していますよ。
ま、でもメイク時間なんて、10分かからない程度ですけどね(笑)
―シュマリナイ湖ワールドセンターの立ち上げから現在まで、お仕事も大変だと思います。
幻の魚、「イトウ」については水族館で働いていた時に存在を知りました。
その頃から、北海道で天然のイトウを見てみたいという思いがあり、そんな時にNPO立ち上げの話があったので、思い切って北海道に移住することを決断しました。
もちろん大変なことは、本当にたくさんありましたよ!
今も大変なのは変わりありません。ただ、大好きなイトウのそばで働いているというのが、私のモチベーションでもあり、生涯に渡る私の軸となると思います。
立ち上げ当時は、みんな手探り状態で本当に大変でしたが、こうやって、釣り人の皆さんがきてくれたり、子供達が来てくれたりして、自然に触れ合う体験をしている姿をみていると、本当にこの仕事を続けてきてよかったと思います。
釣り人の皆さんも、シュマリナイで釣りをする上で、マナーをしっかり守って釣りをしてくれるし、また、そのルールを発信してくれたりもするので、私たちだけでなく、「みんながシュマリナイ湖とイトウを守ってくれている」という姿も嬉しいです。
さらに言うと、今でもイトウの生態ってなぞに包まれているんです。
それが、ちょっとずつですけど、さけます内水面試験場の方々と、いろいろと調査していて分かってきていることもあって、それも私のやりがいになっていますね。
―黒田さんの原動力の源でもある「イトウ」についてお伺いします
まず、朱鞠内のイトウは「イトウ」ブランドの一つだと思っています。
一口に「イトウ」といっても、それぞれの地域や水系で、遺伝子が全然違うんです。
私は朱鞠内湖のイトウを守っていきたいという思いがあります。ですから、朱鞠内湖のイトウを増やすために他の地域からイトウを入れて増やそうとは思っていません。
「増やす=増殖」ではないと私は思っています。
イトウが自然に産卵をしに上がれる環境、稚魚期に暮らせる環境などを整えて、自然に産卵して増やせるようにしたいと思っています。
採卵して人工的に孵化も行っておりますが、昔はイトウがいたけれど、今はいなくなってしまった河川にのみ限定して行うなど、今いるイトウに配慮しながら慎重に行っています。
朱鞠内湖のイトウが産卵に上がる川は、ほとんど北大演習林内にあり、川周辺の環境が良いのでイトウにとって棲みやすく、自然に産卵して増えるような河川環境に恵まれていると思います。
調査などはしっかりと行ってデーターを蓄積し、イトウの産卵床が減っていたら、なぜ減ったのかを専門家にアドバイスなどを頂きながら原因を考えます。
自然環境では、雪解けの増水や倒木などで、河川の環境が変わってしまうこともよくあります。
そういう環境の変化を調査していくと、例えば、イトウの産卵に最適な砂利が減っていたとか、林道が壊れかけて土が深く掘られてしまい、流れが急になって変化したために、イトウの産卵床に適した場所が減っているなど、いろいろなことが分かってきます。
それを今度はどう対処していくのかを、みんなで考えて対処していきます。毎年調べないと分からないことなので、大変な作業ですけど、そういうことが、イトウを増やすことに繋がっていくと思います。
―最後に…黒田さんが外で遊ぶ理由は?
外に出ていると動物だったり花だったり、季節ごとに違った自然を肌で感じられます。天候など、厳しい時もありますが、それもまた自然の魅力の一つだと思います。
外で体を動かすのも好きですし、キャンプなどでは何もせずに自然でまったりと過ごすのも好きです。
私が外で遊ぶことが好きな理由は、自然からパワーをもらってリフレッシュできるからだと思います。
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